EXPOSITION Ⅲ

私は日本列島の最北部に位置する北海道というところで生まれ育ち、ハイスクール卒業後、東京の大学に進学し、その後写真を学びました。大都市である東京は、人類が作り出したものはすべてが揃っています。しかし、まだ私が少年だった頃、冬には深い雪に覆われる北海道で、友達と日が暮れるまで遊び回り、港に陸揚げされた巨大な鯨を見て胸を躍らせたような、そんな心の純朴さは大都市東京では宝物さがしのように難しい事でした。
 私は自分自身の心の原点を求めるように地方へと移り住み、創作活動を続けてきました。これまでに、二度「言葉、肉体、触覚」というテーマで、私の住む地方で作品展を開きました。しかし私の中では、つぎの興味として私の作品が、文化の異なる人々にどのように受け止められるのだろうか。特に、世界中でも写真文化に対して長い歴史と共に深い理解を持つフランスでどのような評価を受けるだろうか、という気持ちがしだいに大きく膨らんでいきました。
 そしてこの度、このようなチャンスを与えていただいた事に深く感謝しています。
作品のモデルは二人の日本人「舞踊家」和栗由紀夫(ワグリユキオ)さん、川本夕子(カワモトユウコ)さんです。「舞踊」というのは、1960年代、日本人ダンサーである土方巽(ヒジカタタツミ)が創りだした身体表現としてのダンスであり、ヨーロッパのバレーやモダンダンスとは違った日本固有のパフォーミングアーツとして、フランスではもちろん世界でも高い評価を受けて、多くの公演が行われてきました。
 何より私が強く惹きつけられるのは、「舞踊家」の持つ肉体の特異性にあります。
彼らの肉体は、表面的には決して筋肉だけに覆われたそれではありません。
 イメージを身体化することによって、言葉を放つ「器」(ウツワ)としての肉体です。それは、相手に対しての気持ちや言葉を、やさしく、強く、そして惜しみなく伝えていくものとして存在しています。そのような「舞踊家」の肉体によって伝えられる言葉は、観る者の視覚だけにとどまらず、聴覚はいうまでもなく、彼らの魂に触れた熱い感覚を触覚としてまで感じることが可能なのです。
 私の作品によって、少しでも彼らの感性に触れられるならば、これほど嬉しいことはありません。最後に、フランスにおいて初めての展覧会を開くにあたって、ギャラリーコレットのサラザン氏、そして今日まで、私をはげまし力を貸してくださった多くの友人に心から感謝の意を述べさせていただきます。ありがとうございました。

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